☆高脂血症
・クレストール2.5㎎1錠朝食後
高LDL血症の時。HDL↑/TG↓効果もあり。作用時間が長いので隔日~週1回でも効果あり。
スタチンの中でも筋副作用が少ない(肝機能とCPKは必ずf/uする)。
4週以降でも効果不十分なら1日1回10mgまで増量可能。
cf)新規処方した場合は2週間後に採血フォローし問題なければ1か月ごとの採血フォロー。問題なければ3か月毎のフォローとする。
・メバロチン10mg1錠朝食後(最大10mg2錠分1まで増量可能)
水溶性で横紋筋融解が少ないとされるスタチン製剤。
・エパデール1回600mg1日3回毎食後
高TG血症の時(TG>500mg/dl)。エイコサペンタエン酸(EPA)。
注意)ロトリガは食直後に内服するのが望ましい
cf)ロトリガとエパデールの違い
・ロトリガ(ω-3脂肪酸)とエパデール(イコサペント酸)はともにTGを下げる不飽和脂肪酸
・ロトリガはEPA930mg+DHA750mg(1日量2g中)
・エパデールはEPA1800mg(1日量1.8g中)
・ロトリガは通常1日1回の服用で、エパデールは1日2-3回服用(ロトリガの方が手間が少ない)
・ロトリガ、エパデールは食直後(食事が終わってから10分以内)に服用しなければほとんど吸収されない
・ロトリガ、エパデールとも出血傾向の副作用があり、抗凝固薬、抗血小板薬との併用は注意する
→ロトリガは1日4g、エパデール1日2.7gが上限量
・ペリシット250㎎3錠分3毎食後
高TG血症の時(TG>500mg/dl)。ニコチン酸系。
cf)クラリスとリポバスは併用禁忌!
CYP3A4阻害の強さ:クラリスロマイシン、エリスロマイシン>>ロキシスロマイシン、アジスロマイシン
代謝でのCYP3A4関与の強さ:シンバスタチン>>アトルバスタチン>その他のスタチン製剤
→クラリスロマイン、エリスロマイシンとシンバスタチンを併用しないようにすること。
cf)
・LDLの目標値:
血管リスク:0なら160以下、1-2なら140以下、3以上なら120以下、ACS既往ありなら100以下
血管リスク:①男45歳、女55歳以上、②HT、③DM、④喫煙、⑤心血管家族歴、⑥HDL<40
参考)ACSの既往ある脂質異常の治療目標はLDL100未満、DM+(非心原性脳梗塞or末梢動脈疾患orCKDorメタボor喫煙)なら70未満と改訂された。
・高LDL血症では、甲状腺機能低下、Cushing、ネフローゼ、CRF、肝硬変、ピルを除外する。
・高TG血症では、飲酒、サイアザイド、β遮断薬、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、シクロスポリン、バルプロ酸、CRF、ネフローゼ、甲状腺機能低下、HIVを除外する。
・腹8分目、3食規則正しく、間食をやめる、運動
・コレステロールを多く含むもの:卵、うに、いくら、たらこ、マヨネーズ、鶏レバー、うなぎ、ヨーグルト、バター、生クリーム(現状の半分程度にしてみるよう指導)
・コレステロールを下げるもの:青魚(サンマ、イワシ、サバ)、オリーブオイル
cf)脂質代謝の検査項目
・LDL/ApoB:LDL-Cの平均サイズ。通常1.40以上、1.17を切ると小型化で動脈硬化惹起性で、1.1以下は極めて不良。
・ApoE/ApoC3::0.7以上だとIII型高脂血症の可能性がある。
・LPL:リポタンパクリパーゼ。LPL>40が目安。内臓脂肪肥満や高血糖下では低値となる。
・ApoB:男性73-109、女性66-101が基準値。90未満が望ましい。
・ApoB/ApoA1:カットオフ値はないが、0.4-0.7だと質としては良好と考えられる。低い方がよい。
・LDL/HDL:質に着目した指標。DM患者では2.0以下、冠動脈疾患を有する患者は1.5以下は目標。
・non-HDL=T-ChoL-HDLにて算出。算出値がLDL+30が目安。それを超えると質の悪化(IDLやVLDLの増加)を疑う。スタチンやフィブラートの開始を積極的に考える必要がある。T-ChoL=LDL+HDL+TG/5で、TG/5がVLDL-ChoLに相当する。
cf)動脈硬化の検査項目
・頸動脈US:IMT(頸動脈内膜中膜複合体肥厚度)が1mmを超えていたら肥厚ありと判断する。Hard,mixed,softは見た感じで判断する。PI値(Lt.ICA)が1.2を超えると頭蓋内血管狭窄の可能性があると考える。
・ABI:上腕と足首の血圧から算出。1.30以上:下肢動脈高度石灰化、1.00-1.29:正常、0.91-0.99:境界域、0.41-0.90:軽度から中等度、0.40以下:重度。
・TBI:足趾・上腕血圧比。足趾血管は石灰化を免れることが多く、TBIでは石灰化の進行している患者でも閉塞病変の存在を評価することが可能。
・CAVI:動脈の硬さの指標。血圧の影響を受けにくい。9.0以上:動脈硬化の疑い、8.0-9.0:境界域、8.0以下:正常範囲。
cf)クレストールで筋肉痛が生じた場合
・自己中断した場合は、筋肉痛やCK上昇、尿潜血ないなら再開し1週間後再診でもよい場合が多い。
・高LDLがあるならメバロチン、リピトール、リバロなど他のスタチンに変更。メバロチンは水溶性で横紋筋融解が一番生じにくい。
・それでも筋肉痛が出る場合はゼチーアに変更(ただし横紋筋融解の副作用記載あり)。
・エパデールやユベラなども考慮。
・コレバインは吸収されないはずなのに、横紋筋融解の記載あり。
・典型的な横紋筋融解症:全身倦怠を主訴として来院、数万のCPK、高いミオグロビン(血中、尿中)、茶褐色の乏尿などを生じる。スタチン中止、ステロイド、点滴、利尿剤で改善するが腎障害が残ることあり。
・スタチンには抗酸化作用、抗炎症作用、抗血小板作用がありACSの発症抑制効果がある。心血管イベントを3割減らす(逆にスタチン以外には抑制効果なし)。
・CK上昇なしに四肢の筋痛、違和感、倦怠感を訴えることがある。内服中止で消失し、チャレンジテストで再現性があり。この副作用があるとまず継続できないほどの嫌な症状。一方、CK上昇が300−400程度なら無症状で、上昇傾向がなければ投与を続けてもよい。
・家族性高コレステロール血症なら筋肉痛を生じても融解症まで至らなければ継続の意味ありか。
・Circulation. 2005;111:The Safety of Rosuvastatin as Used in Common Clinical Practice.A Postmarketing Analysis.によると横紋筋融解とその結果生じる蛋白尿、腎不全等の各種腎障害の発生はクレストールが圧倒的に多く、シンバスタチンの2倍以上、プラバスタチン/アトルバスタチンの6-8倍以上の発生頻度。
cf)スタチンは耐糖能に影響を与える。
・1か月ほどでHbA1cが1%近く上がった例もある。
・耐糖能に影響を及ぼしにくいのは低強度スタチン(プラバスタチン,シンバスタチン)
・高強度スタチンでも耐糖能に影響を及ぼしにくいのはピタバスタチン
・耐糖能に影響しやすい高強度スタチン(ロスバスタチン,アトルバスタチン)を用いる場合は糖尿病治療調整も必要となりうる。
cf)スタチンパラドックス
スタチンには水溶性と脂溶性のがあり、ロスバスタチンやアトルバスタチンは脂溶性。脂溶性スタチンは肝細胞以外の細胞に取り込まれ、血管壁の平滑筋細胞でPCSK9産生が増加し、泡沫化したマクロファージからのABCA1経路を介した脂質の引抜きを抑制し、血清LDL-Cは70mg/dk未満でも、冠動脈プラークは進展するという「スタチンパラドックス」を起こす(O.Bayturan et al. J Am Coll Cardiol. 55:2736–2742, 2010)
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